「プールで泳ぐとどれくらいカロリーを消費できるの?」——ダイエットや体力づくりを目的にプール通いを検討している方なら、一度は気になるポイントではないでしょうか。水泳は全身の筋肉を使う有酸素運動であり、ランニングやウォーキングと比べても消費カロリーが高い運動として知られています。
ただし、同じ「プールで泳ぐ」といっても、クロール・平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライでは体の使い方がまったく異なります。当然、泳ぎ方によって消費できるカロリーにも大きな差が出ます。さらに、泳ぐスピードや体重によっても数値は変わるため、正確な目安を知っておくことがトレーニング計画の第一歩になります。
ここでは、国立健康・栄養研究所が公表している「改訂版 身体活動のメッツ(METs)表」の数値をもとに、泳ぎ方別の消費カロリーを具体的な数字で比較していきます。泳げない方でも取り組める水中ウォーキングや、他の運動との比較データも取り上げているので、自分に合ったプール活用法を見つける手がかりにしてみてください。
消費カロリーの計算に使う「METs(メッツ)」とは?
水泳の消費カロリーを正しく把握するには、METs(メッツ)という指標を理解しておく必要があります。METsとは「Metabolic Equivalents」の略で、安静時(椅子に座って静かにしている状態)のエネルギー消費量を「1」としたとき、ある運動がその何倍のエネルギーを消費するかを示す数値です。
たとえば、METsが8.3の運動は安静時の8.3倍のエネルギーを使っていることになります。この数値が大きいほど運動強度が高く、同じ時間でもより多くのカロリーを消費できるわけです。
消費カロリーの計算式
METsを使った消費カロリーの計算式は以下の通りです。
消費カロリー(kcal)= METs × 体重(kg) × 運動時間(時間) × 1.05
この計算式は厚生労働省の資料でも用いられている標準的な方法です。たとえば体重60kgの人が、METs 8.3のクロールを1時間泳いだ場合は「8.3 × 60 × 1 × 1.05 = 約523kcal」となります。
泳ぎ方別のMETs値と消費カロリー一覧
国立健康・栄養研究所の「改訂版 身体活動のメッツ(METs)表」に基づいて、主な泳法のMETs値をまとめました。同じ泳法でも強度によってMETsが大きく変わる点に注目してください。
| 泳ぎ方・活動内容 | METs値 |
|---|---|
| クロール(普通の速さ/分速45.7m) | 8.3 |
| クロール(速い/分速68.6m未満) | 10.0 |
| 平泳ぎ(レクリエーション) | 5.3 |
| 平泳ぎ(トレーニング・競泳) | 10.3 |
| 背泳ぎ(レクリエーション) | 4.8 |
| 背泳ぎ(トレーニング・競泳) | 9.5 |
| バタフライ(全般) | 13.8 |
| 水中ウォーキング(ほどほどの速さ) | 4.5 |
| アクアビクス | 5.3 |
※出典:独立行政法人 国立健康・栄養研究所「改訂版 身体活動のメッツ(METs)表」
バタフライの13.8 METsはすべての泳法のなかで圧倒的に高い数値です。一方で、のんびり泳ぐ背泳ぎやレクリエーションレベルの平泳ぎは5.0前後と、比較的穏やかな強度にとどまります。
体重別・泳ぎ方別の消費カロリー早見表【1時間】
実際にどれだけカロリーを消費できるのか、体重50kg・60kg・70kg・80kgの4パターンで、1時間泳いだ場合の消費カロリーを計算しました。
| 泳ぎ方 | 50kg | 60kg | 70kg | 80kg |
|---|---|---|---|---|
| クロール(普通) | 約436kcal | 約523kcal | 約611kcal | 約698kcal |
| クロール(速い) | 約525kcal | 約630kcal | 約735kcal | 約840kcal |
| 平泳ぎ(レクリエーション) | 約278kcal | 約334kcal | 約389kcal | 約445kcal |
| 平泳ぎ(トレーニング) | 約541kcal | 約649kcal | 約757kcal | 約866kcal |
| 背泳ぎ(レクリエーション) | 約252kcal | 約302kcal | 約353kcal | 約403kcal |
| 背泳ぎ(トレーニング) | 約499kcal | 約599kcal | 約699kcal | 約798kcal |
| バタフライ | 約725kcal | 約869kcal | 約1,015kcal | 約1,159kcal |
| 水中ウォーキング | 約236kcal | 約284kcal | 約331kcal | 約378kcal |
※計算式:METs × 体重(kg) × 1(時間) × 1.05 で算出(小数点以下四捨五入)
体重60kgの人がバタフライを1時間泳ぐと約869kcalもの消費になりますが、実際に1時間バタフライを泳ぎ続けるのは競泳経験者でもかなりハードです。現実的な運動としては、普通の速さのクロールで約523kcal、レクリエーションの平泳ぎで約334kcalあたりが目安になるでしょう。
【30分の場合】短時間でもどれくらい消費できる?
「1時間も泳ぐのは大変」という方のために、30分あたりの消費カロリーも確認しておきましょう。体重60kgの場合で計算しています。
| 泳ぎ方 | 30分の消費カロリー(体重60kg) |
|---|---|
| クロール(普通) | 約262kcal |
| クロール(速い) | 約315kcal |
| 平泳ぎ(レクリエーション) | 約167kcal |
| 平泳ぎ(トレーニング) | 約325kcal |
| 背泳ぎ(レクリエーション) | 約151kcal |
| バタフライ | 約435kcal |
| 水中ウォーキング | 約142kcal |
30分のクロール(普通の速さ)で約262kcal。これはおにぎり約1.5個分、ショートケーキ約1切れ分に相当します。まとまった時間が取れない日でも、30分の水泳で十分なカロリー消費が期待できます。
クロール・平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライの特徴を比較
消費カロリーの数字だけでなく、それぞれの泳法の特徴や向き不向きを把握しておくと、自分に合った泳ぎ方を選びやすくなります。
クロール——バランスに優れた万能型
4泳法のなかで最もスピードが出せる泳法です。普通の速さでもMETs 8.3とかなり高い運動強度があり、長時間泳ぎやすいのが特徴。初心者から上級者まで幅広い層が取り組め、「効率よくカロリーを消費したいけど続けやすさも大事」という方に最も適しています。腕の回転と息継ぎのリズムが安定すれば、30分〜1時間の連続泳も十分可能です。
平泳ぎ——ゆったり長く泳ぎたい人向け
レクリエーションレベルだとMETs 5.3と控えめですが、トレーニングレベルで泳ぐとMETs 10.3まで跳ね上がります。この差はかなり大きく、泳ぎ方の精度によって消費カロリーが大きく変わる泳法といえます。クロールほどスピードは出ませんが、呼吸がしやすく長い距離を泳ぐのに向いている点がメリットです。ただし、キックの動きが独特なので、正しいフォームを習得するまでは少し時間がかかるかもしれません。
背泳ぎ——呼吸がラクで初心者にも取り組みやすい
4泳法で唯一、顔を水につけずに泳げる泳法です。レクリエーションレベルのMETsは4.8と、四泳法のなかでは最もカロリー消費が穏やかです。ただ、呼吸を気にせず泳げるため疲れにくく、リラックスしながら長時間続けられるのが大きな利点。水泳に慣れていない方が水中ウォーキングの次のステップとして取り入れるにはちょうどいい泳法です。
バタフライ——消費カロリー最強だが難易度も最高
METs 13.8は四泳法のなかで断トツ。全身をダイナミックに使うため、短時間でも非常に高いカロリー消費が見込めます。ただし、上半身・腹筋・脚を連動させるうねり動作の習得が難しく、体力的にも長時間泳ぎ続けるのは困難です。ある程度泳ぎ込んだ経験者が、トレーニングのアクセントとして取り入れるのが現実的な使い方でしょう。
泳げない人でも大丈夫——水中ウォーキングの消費カロリー
「泳ぎが苦手」「プールに通いたいけど泳げない」という方には、水中ウォーキングがおすすめです。ほどほどの速さで歩くだけでもMETsは4.5。体重60kgの人が1時間水中ウォーキングをした場合、約284kcalを消費できます。
水中ウォーキングには、泳ぎとは違った利点もあります。
- 水の浮力により、膝や腰への負担が陸上の約1/10に軽減される
- 水の抵抗があるため、陸上でのウォーキング(METs 3.0〜3.5)より運動強度が高い
- 全身にバランスよく水圧がかかるので、偏りなく筋肉を使える
- 泳法のスキルが不要で、プールに入ったその日から始められる
体重が重めの方や関節に不安がある方は、ランニングよりも水中ウォーキングのほうが安全に継続しやすいケースが多いです。まずは週1〜2回、30分の水中ウォーキングから始めてみるのがよいでしょう。
水泳 vs 他の運動——消費カロリーを比較するとどうなる?
水泳の消費カロリーが実際に高いのかどうか、他の代表的な運動と並べて比較してみましょう。以下は体重60kgの人が1時間運動した場合の目安です。
| 運動の種類 | METs | 1時間の消費カロリー(60kg) |
|---|---|---|
| ウォーキング(普通の速さ) | 3.5 | 約221kcal |
| 速歩(時速6.4km) | 5.0 | 約315kcal |
| ジョギング(ゆっくり) | 7.0 | 約441kcal |
| ランニング(時速8km) | 8.0 | 約504kcal |
| 水中ウォーキング | 4.5 | 約284kcal |
| クロール(普通の速さ) | 8.3 | 約523kcal |
| バタフライ | 13.8 | 約869kcal |
| 自転車(時速20km前後) | 8.0 | 約504kcal |
| エアロビクス | 7.3 | 約460kcal |
普通の速さのクロールだけで、時速8kmのランニングとほぼ同等かそれ以上のカロリーを消費できることがわかります。しかも水泳には浮力による関節負担の軽減というメリットがあるため、体重が重い方や膝に不安を抱える方にとっては、ランニングよりも身体にやさしい選択肢です。
ハーバード大学医学大学院が公表しているレポートでも、体重約70kgの人が30分運動した場合、クロール・バタフライはそれぞれ409kcalと報告されており、同条件のランニング(時速8km)の298kcalを大きく上回っています。
消費カロリーを効率よく増やすためのポイント
同じ時間プールにいても、ちょっとした工夫で消費カロリーは変わります。以下のポイントを意識してみてください。
1. 泳法を組み合わせて飽きを防ぐ
同じ泳法をひたすら繰り返すと飽きやすく、モチベーションが下がりがちです。たとえばクロール200m → 平泳ぎ100m → 背泳ぎ100mのように泳法を切り替えると、使う筋肉も変わって全身をバランスよく鍛えられます。泳ぎに慣れてきたら、最後にバタフライを50〜100m加えるとカロリー消費のアクセントにもなります。
2. 一定のペースで長く泳ぐことを意識する
短距離を全力で泳いで長い休憩を取るよりも、ゆっくりでもいいので一定のペースを保って泳ぎ続けるほうが、脂肪燃焼には効果的です。有酸素運動として脂肪がしっかり燃え始めるのは運動開始から20分ほど経ってからとされているため、少なくとも30分以上の連続運動を目標にしましょう。
3. インターバルトレーニングを取り入れる
ある程度泳げるようになったら、速いペースと遅いペースを交互に繰り返すインターバルトレーニングも有効です。たとえば「50mを速めに泳ぐ → 50mをゆっくり泳ぐ」を繰り返すと、心拍数の変動が大きくなり、トレーニング効果が高まります。距離やタイムを少しずつ伸ばしていくことで、上達も実感しやすくなるでしょう。
4. 頻度は週2〜3回がベスト
水泳は全身運動のため、毎日続けると筋肉の回復が追いつかずオーバーワークになる可能性があります。筋肉の回復には48〜72時間が必要とされるため、週2〜3回のペースが理想的です。無理をして通い詰めるよりも、適度に休みを入れながら長く続けるほうが結果的にダイエット効果は高くなります。
プールでの消費カロリーに関してよくある疑問
Q. クロール25mを1本泳ぐと何カロリー消費できる?
体重65kgの人が普通の速さのクロール(METs 8.3)で25mを約32秒で泳いだ場合、計算上の消費カロリーは約5kcalです。1本あたりの数字としては小さく見えますが、たとえば25mを20本泳げば約100kcal。距離と本数を積み重ねることで十分な消費量になります。
Q. 水中にいるだけでもカロリーは消費される?
水温はプールの場合おおむね28〜31℃程度で、体温(約36〜37℃)よりも低い環境です。体は水中で体温を維持しようとして、陸上よりも多くのエネルギーを使います。ただし、ただ浮いているだけでは運動によるカロリー消費は期待できないため、やはり泳いだり歩いたりして体を動かすことが大切です。
Q. 水泳だけで体重は落とせる?
水泳は消費カロリーが高い運動ですが、ダイエットの基本は「消費カロリー > 摂取カロリー」です。泳いだ分以上に食べてしまえば体重は減りません。水泳後は空腹感が強くなりやすいため、食事量のコントロールも合わせて意識することが重要です。
Q. 平泳ぎは本当にダイエットに向いている?
「平泳ぎは痩せやすい」という情報をよく見かけますが、レクリエーションレベル(METs 5.3)の平泳ぎは、普通の速さのクロール(METs 8.3)よりも運動強度がかなり低くなります。正しいフォームで速いペースの平泳ぎ(METs 10.3)を泳げるなら高い消費カロリーが見込めますが、見よう見まねでゆっくり泳ぐ場合は思ったほどカロリーを消費できていない可能性があります。カロリー消費を優先するなら、まずはクロールを選ぶほうが確実です。
まとめ——自分に合った泳ぎ方で、無理なく続けることが一番
プールでの消費カロリーは泳ぎ方によって大きく異なり、バタフライが最も高く、次いでクロール、平泳ぎ(トレーニング)、背泳ぎの順になります。ただし、消費カロリーが高い泳法ほど体力的な負担が大きく、長時間続けるのが難しいという側面もあります。
ダイエットや健康維持を目的にするなら、「自分が続けやすい泳ぎ方で、できるだけ長い時間プールにいること」が最も大切なポイントです。カロリー消費の効率だけを追い求めてハードな泳法に挑戦しても、途中で挫折してしまえば元も子もありません。
まずは水中ウォーキングや背泳ぎなど負担の少ないメニューから始め、慣れてきたらクロールの距離を伸ばし、体力がついてきたらバタフライを取り入れる——というように段階的にステップアップしていくのが、プールダイエットを成功させるコツです。週2〜3回、30分以上を目安に、自分のペースで取り組んでみてください。